5年3組パラダイス
「そう。かつおじゃなくて、マグロ。マグロだよ。」
「だよな、どう見てもマグロだよな。」
「ってゆーか、さっき、雄二君のお父さんに会って教えてもらったんだけど、黒マグロの子供で“めじ?”そうそう、めじって言うんだって。知ってる?魚って、稚魚の頃から成長度合いによって呼び名が変わるんだって。一般に普通にマグロって呼ばれる黒マグロは、前兆40cmから1mくらいの大きさのものを“ めじ ”とか“よこわ ” とか“ コグロ ”って言って、地域によって呼び名が違うんだって。って、僕って結構頭良いかも。教えてもらったこと丸暗記してるー。」

僕は話をそらそうとして、後で考えるとこの時だけ、やたら早口でマシンガントークで、やっぱ、自然じゃなかった。

「でも、かつおって言った。」
「い、言ってないってば。そ、そんな事、一言も・・・」
「じゃ、何でキョドる?」
「キョドってなんかないし・・・別に。」

な、何故学君は、そんなに突っ込んでくるの?

学君が僕の顔と、僕が背負ってる魚と交互にじっとみていた。なんか、変にかんぐられているような気がして、僕の心臓はドキドキと煩い音を立て始めた。

「うわぁ!こいつ、今睨んだ!」
「学君、気のせい!・・・だよ!」
「睨んだ睨んだ!」

かつお君ったら、死んだ魚のフリしてくれればいいものを・・・。つっても、しょうがないか。かつてかつお君を苛めていたガキ大将、積もる恨みごとは多々あっただろうし・・・。

「将太、お前、まさおの事かつおって呼んでたよな?その魚・・・、まさか、まさおなのか?」
「は、はぁぁぁぁ?!何言ってんの?学君は?」
「いいんだ、オレ、知ってるから。」
「し、知ってるって・・・何を?」
「まさおが、神様の子だったって事。」
「ぎょ、何だよーそれ?」

か、神様~?なんで、そうなるの??

なんか、ついさっきまで悪がきっぽく暴れてた学くんが、いきなりシリアスになっていた。

「将太、お前覚えてるか?3年生の春、まさおが1ヶ月学校に通ってた時のこと。」
「ま、まぁ・・・勿論。」
「あの時の散らない桜って、あれさ、まさおが木に魔法をかけてたんだ。」
「・・・・」

それは、知ってる。魔法じゃないんだけどね。でも、なんで学くんがそれ知ってんだろ?



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