5年3組パラダイス
「な、なんで?他の友達みんな、お洒落してきてるし、し、新聞に載せる写真なら、お洒落してる子を写してあげてください。」
「いやー、自然でいいんだよ。」
「普通の格好じゃないと不自然でしょ?」
「おじさん達から見ると僕みたいな子の写真、撮らせて欲しいな。」
「あの、桜の木の下で、写真取らせてくれない?」
「桜が咲いた瞬間とか、見れたの?」

質問攻めだ。

「や、や、や、僕、ダメ。ごめんなさい。」

走って逃げようとしたんだ。
だけど、ぐいっと誰かに引っ張られて・・・。僕のリュックに被せたジャージが剥ぎ取られた。

『や、やぁ!皆さん、おはようデス!』

かつお君も、驚いて思わず報道人の皆さんに挨拶しちゃった。と言っても、かつお君の言葉が普通の人に聞こえるわけないけど。

「魚?」
「僕、変わった物もって来てるね。何に使うの?」
「え?あ、の、その・・・、これ。」

なんて応えていいか分からなくて、かつお君に助け舟出してもらいいたいと思って振り向いて横目でかつおくんを見てみたけど、何も応えない。たぶん“死んだフリ”してるんだろうな。

「この魚は、マグロかな?」
「あ、は、ハイ。」
「で、何に使うの?」

そうきかれて、とっさに色々頭の中で考えた。
女子の家庭科の調理実習?学級のペットで飼ってる?釣った魚を自慢げに持ってきたとか?
・・・どれもしっくり来ない。
なんて応えよう・・・。

「ぼ、僕、行かなきゃ、今日、当番なんです。」

と言って逃げ出したくても、報道の人の手が僕をがっしり掴んで話してくれない。

「離してください。お願いします。」




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