5年3組パラダイス
そこで、理恵ちゃんが現れ、天の助けに入って来てくれた。

「そのマグロは、私達のクラスの図画の時間に使うモデルです。本物の魚を見ながら絵を描くんです。」

報道人の視線は、皆、理恵ちゃんのほうを向いてくれた。
理恵ちゃんは僕に、『ここは任せて』って言うように目で合図を送ってくれた。

そそくさと僕はその場を離れた。

けど、気になって、ちょっと離れたところから見ていることにした。
報道人の誰かが、もしも理恵ちゃんに失礼なことをしようとしたら、男の子として女の子を守らなければいけないのは当然のことだもんね。

理恵ちゃんは他の子と違って、これと言ったお洒落をしているようには見えなかった。
普通の、いつものままの理恵ちゃん。

「あのー、良かったら、これ、記事に役に立ちませんか?」

理恵ちゃんは手にCDを持って差し出した。

「昨日、桜の木の前で皆で映した写真と、そのレポートみたいなの書いてきたんですけど、CDに焼いてきました。写真載せるなら、これ、使って頂けたら嬉しいのですけど。」

へぇぇ。

「CDの中の写真、今、携帯にもはいってるの。こんな写真です。」
「どれどれ・・・?へぇぇー、桜を背景に元気いっぱいの子供達・・・いい写真だね。」
「この思い出は5年3組皆のものなので、新聞に載せて頂けるなら、皆一緒がいいなって思って。」
「じゃぁ、これ、使わせてくれる?」
「あ、はい。どうぞ。CD10枚作ってきましたので。あ、10枚じゃ足りなそうですよね。足りなかったら、写メでも送ります。写真も文章も・・・、あ、高画質で撮ったので写真のサイズ大きくて送信できないかな。放課後で良かったら、またCD作ります。」

なんとか、報道人たちは満足してくれたようだった。





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