時の歌姫
葉っぱだ。


少しだけ目が慣れてくると、そこが紛れもない緑の空間であることに気づく。

緑の葉っぱや枝に囲まれた繭みたいな場所。


あ、何?

伸ばしていた手が、ふわりとした異質な物に触れた。
植物とは違う暖かな気配。

大きな影だったそれが、ゆっくりとあたしに近づいて。

目の前に来た時には気づいていた。

それが人間だって。


「大丈夫?」

少しくぐもった優しい響きの声。

アッシュグレイの柔らかな虹彩。

同じ色のふわふわした髪に、あたしの指が絡まっている。


都会の真ん中に現れた小さなジャングルで、

あたしは彼に出会った。
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