時の歌姫
「だ、大丈夫です」

答えながら、知らない男の人の髪を触っていることが急に恥ずかしくなって、

弾かれたように手を引っ込めた。


触れていた指先がなんだか熱い。


「そう。よかった」

彼は鼻に皺を寄せて無邪気に微笑む。

あ、この笑顔好き。


なんて和んだのもつかの間。

気づけばこの繭みたいな空間はかなり狭くて、彼は四つばいの体勢だ。

あたしは、あたしは!?


制服のスカートのまま無防備に膝を立てて座ってる!

もしかして、パンツ見えてる?


急に情けない現実に引き戻された。
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