時の歌姫

ブラックコーヒー

「はい、お待たせ」

「お、サンキュー」


ヤス兄はカップを少し持ち上げて微笑むと、湯気の立つコーヒーに口をつけた。

あたしの密かな至福の時間。

二人で一緒にごはんやお茶をするのも好きだけど、

店でお客さんのヤス兄にこうやってコーヒーを出すのも好きで。


シフトが終わる少し前に待ち合わせてみたりする。


あの騒ぎで大幅に休憩時間を延長してしまったけど、皆そうだったようで、店長からのお咎めはなく、


濡れてしまった制服を着替えたあたしは、ウェイトレスに戻っていた。