時の歌姫
あたしの足を止めたのは、初め小さな音だった。

音というか、車のエンジン音みたいな振動。

よくよく考えてみると、夕方の繁華街で、

ビルの屋上にまで届いてくるぐらいだから、近くにいたらハンパない音だったろうけど。


エンジン音は百倍ぐらい大きい衝撃音に一瞬にしてかき消された。


「ヤス兄!」

この後会う予定にしていた大事な人のことを思い出し、

あたしは屋上の金網から身を乗り出す。


すぐ下は広場になっていて、その一角で今日は能力者達の集いが行われていたはずだ。


そこに斜めになって突っ込んでいる青いトラックが目に入った。

< 3 / 72 >

この作品をシェア

pagetop