時の歌姫
宍戸 海斗(カイト)。


あたしをオーディションで落とした、敏腕大物プロデューサー。


昼間に見せた、これ以上ないってくらい不機嫌な表情からは想像できない顔をして。


押さえきれない興奮からか、頬が上気している。


『彼女のような逸材に出会えるのは、プロデューサーの永遠の夢でした』


口の中に苦いものが広がった。


大げさ過ぎるセリフもすでに過去形。


てことは。

該当者なしで終わるかもしれないと言われたあのオーディションで、


出たんだ、優勝者が。
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