時の歌姫
「怪我はなかったのか?」

「あ、はい。大丈夫でした」


本当はかすり傷が少々。

でもそれは自業自得だ。


「よかった」

なんて無邪気に笑ってくれる顔を見て、思ってしまう。

この人モテるんだろうなあって。


あたしだってヤス兄がいなかったら、甘いセリフと声にフラフラしてしまいそう。


ラベンダー色のシャツに、黒のコットンパンツ。

お洒落だけど、サラリーマンて服装じゃないし。


平日の昼間からコーヒーを飲みに来ては、新聞を読んだり雑誌を眺めたり。


何をしてる人なんだろうっていつも不思議に思う。
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