時の歌姫
目の前を街路樹の葉が大きく舞って、

一瞬どこにいるかわからなくなるほど視界が揺れた。

もちろん風が吹き去ると、いつもの広場。

そこに、あいつがいた。


一際大きな木にそっと抱きつくように顔を付けてる。

あ、あの木。

昨日あたしを助けてくれた子かな。


だとするとやっぱり彼なんだ。

目の前の静かな光景に、さっきまでの怒りは消えていて。

あたしはためらいもなく彼と木に近付いて行く。


「ねえ。素敵な木だよね」

優しい気持ちで、自然に話しかけたけど、


「なっ、おまえ何だよ!」

彼は弾かれたように木のそばを離れた。


おまえ呼ばわりか。

やっぱりムカツク。
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