時の歌姫
「おまえ能力者?」

「違うよ」

ふるふると首を振って答えると、なぜかヤツの表情が曇った。

よくわかんないなあ。


「こいつらはさ、昔から何でも知ってるんだよ。
たまたま能力を得た俺にはわかるけど、ほんとはそんなの関係ないんだ」


あたしもヤツみたいに樹の肌に手の平で触れてみた。

ひんやりするのに、温もりも感じる。

まるで生きてるみたい。


って、樹は生きてるんだよね。

そういう風に考えたこと、なかったけど。


「なんとなく、わかる」


あたしが気づこうと気づかまいと、この子はずっと昔から生きてる。


そういう意味と同じかな、と思ってふと口をついた言葉。
< 59 / 72 >

この作品をシェア

pagetop