時の歌姫
「お待たせしました」

そっと目の前に置いたカップを無言でとりあげるヤス兄。

密かにあたしがヤス兄専用にしている炭ブラックの四角いカップは今日も様になってる。


けど。

カップを唇につけたまま、ヤス兄は停止状態だ。

やっぱりなんかおかしい。

「ヤス兄、どうしたの?」
「え、な、何がだよ」

うろたえてるし。


振り向いたヤス兄の頬は赤くて、瞳も心なしか潤んでる。

熱でもあるんだろうか。


「ミチル、俺さあ」

風邪薬でも取ってこようか、と思ってたらヤス兄が口を開いた。
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