時の歌姫
「すごい人」

ライブハウスの中をちらっとのぞくと満員電車みたいだった。

ターミナル駅とはいえ地元のライブハウスで、あたしが来たことあるのは友達のライブくらい。

プロももちろん使うけど、あまり有名な人は来ない場所だ。


「急に決まったからここしかなかったみたいなんだ」

そういいながらヤス兄は関係者限のロープをくぐる。

あたしもあわてて後を追った。


早足のヤス兄に小走りでついていく。

突き当たりのドアの前に、何人かの人が立っているのが見えた。

「おう、ご苦労さん」

ヤス兄に声をかけたのは、広告会社の社長だ。

あたしも何度か会ってる。

ペコリとお辞儀をしながら、社長と話している人が目に入り。


や、やばい! 宍戸だ!

心臓がドキンとなった。
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