時の歌姫
白いスーツを着た女の人だ!

向こうも驚いたようにあたしを見ている。


肌が透きとおるように綺麗で、肩先までの茶色い髪が揺れていた。

あの人はもしかして?


思った瞬間、視界の端、斜め後ろに棒を持った男の人が映った。

警察からか、逃げるように走っていたその男は、まずあたしに気づき、

それでも自分の身の安全を優先したのか、迷いながらも向き直ろうとしたのに。


見つけてしまった。


彼女を。
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