時の歌姫
男の顔がみるみる紅潮する。

やっぱり、彼女はあの人なんだろうか。


そんなことを思ってる間もなく、

地の底から響くような唸り声を上げながら男は棒を振り上げて。


彼女に向かって突進する。

二人の間には遮るものは何もない。


はずだったのに。

一瞬後に起こるはずの惨事に叫びだしそうになったあたしの前に、

弾け飛ばされたような男の体が転がった。


な、何が起こったの!?
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