それが恋だと気付くまで。
「はあ…土方さんが心配性すぎるだけじゃねーの。」
土方斎(ひじかた いつき)さんは俺の一個上、産まれた時からずっとお隣さんで一緒だった
何でもおばさんがとんでもない戦国好きでおじさんと結婚したのも名字に惹かれてだそう。
いつきの由縁は教えてもらう前におじさんとおばさんが亡くなってしまったからわからないままだけれど。
おばさんにあの時教えて貰った土方歳三さんの素晴らしさが忘れられず生まれてから呼んだことのなかった「土方さん」という呼び方を小三の頃から続けている。
別に斎さんを尊敬しているとかそういうわけではない
と思う。
所々敬語なのはうちの母ちゃんの真似
幾つか上の父ちゃんに時々タメ語で時々敬語だったからその真似。
「お前また呼び出しくらってたな、今度は何した。」
「なんですか、唐突に」
いつも厳しい土方さんだけど
なんだか今日は何処かおかしい。
「別に」
ホントは『俺と禁断の愛の物語始めませんか』なんてサブイ事言われたなんて口が裂けても言えない
そんなこといえばあの人の事も言いかねない
今でさえ心配性発揮してんのにそんなこと知れば柱に括りつけられてしまう
それだけは御免だ、何としても避けねば
「そうか」
それだけ、ですか。
なんだこれ、何期待してんだ俺。
俺には想い人がいるではないか
きっと一方通行だけど、
「あ、そういや明日土方さんなんか用あるんでしたよね。俺明日先行きますね」
「ああ、悪ぃな。」
「いえいえ、なんて事無い。じゃまた後で」
すぐに切り出して家に入る。
入ったって隣にいるから変わらないけど。
俺の家は父ちゃんと弟と五人暮らしだ、ただ父ちゃんは海外出張?転勤?で海外、たしかシアトルにいる。
だからほとんど四人暮らしだ。
土方さんは両親共亡くなって病院持ってるじいちゃんに世話になってるらしい、家はそのままで。
だから一人暮らしのようなものみたいでよくというかほぼ毎日晩飯を俺ん家で一緒に食っている
「ねーちゃん、おかえり」
この格好いいのが長男で弟の小春(こはる)高校三年
私たちは性別を間違えられて名前を付けられた哀れな姉弟だ
「お姉ちゃんおかえり」
この可愛らしい乙女が次男
愛華(あいか)読んで字の如く愛でられ華のように育てられたのが愛華。
男なのに泣き虫で弱っちいだからついつい護りたくなっちゃう
ちなみに名前は女と勘違いしたじーちゃんが付けました。
あとは三男の信義と
超絶可愛い天使、四男の隆
この2人を紹介するのはまた今度
とにかく賑わっている家庭です。
「晩飯なにー?」
「小春の大好きなピーマンのピーマン詰め」
「うげぇ、」
吐く真似をしてみせる小春についついいたずら心がくすぐられる。
「嘘ですぅーロールキャベツ!」
「やったぁー!」
ねーちゃん大好きーなんて年甲斐もなく抱き着く小春を引き摺りながら料理する
母ちゃん居なくなって暫く大変だったけど土方さんも支えてくれてるしなんとかやってけそーだと肩を下ろした。
母ちゃんが亡くなってようやく、一年だ。