甘いあまいイチゴの香り
冬馬くんが菫ちゃんを抱きしめ、
菫ちゃんのサラサラの綺麗な髪に手を差し込み、もう一方の手は背中を優しく撫でていた。
菫ちゃんも、ぎゅっと冬馬くんに抱きつきその大きな胸に顔を埋めていた。
「っっ!」
私は驚きのあまり声を上げそうになり、思わず手で口許を覆って後ずさると、
静かにドアが閉まり、私は踵を返して階段を駆け上がった。
部屋に入るとベッドに潜り込んで、枕に顔を埋めて声を殺して泣き続けた。
その夜、久しぶりに冬馬くんと一馬くんが家にご飯を食べに来た。
部屋にこもっている私を心配して冬馬くんが部屋に来てくれたけど、体調が悪いと嘘をついて下には降りなかった。
この時、私は初めて冬馬くんに嘘をついた。
「うぅぅぅぅ……。なんでぇ。。。」
冬馬くんは、菫ちゃんが好きだったんだ……
菫ちゃんも冬馬くんに抱きついてた。
二人は誰が見てもお似合いで、
子どもの私には入っては行けない雰囲気があって、、、
冬馬くんも昔は私のことを大好きだと言ってくれていたけど、それは妹としてだったんだ。
特別じゃない。
ただの妹。
お嫁さんにしてくれるって言ったのに、、、
そう思うと泣いても泣いても涙は止まらなくて、、、
気がつくとそのまま眠ってしまい、翌朝ひどい顔になっている私を見て、ママとパパが驚いた顔をしていた。
こんな酷い顔を見られたくなくて、急いでご飯を食べると学校に行くまでの間、部屋から一歩もでなかった。
そしてその日を境に、もう5年も毎日欠かさなかったお見送りに行かなくなった。