甘いあまいイチゴの香り
玄関から私を呼ぶ菫ちゃんの声が聞こえる
「さくらー?もう、いっちゃうよ!?冬馬くんも待ってるよー?どうしたの!?」
もう、やめてよ。
二人で行けばいいのに。。。
トントントンと階段を上がってくる音が聞こえたかと思うと、
トントンと部屋をノックする音が聞こえた。
「桜?どうしたの?体調がまだ、よくならないの?」
大好きな冬馬くんの声にまた涙が止まらなくて、
私はドアを少しだけあけて、もうだいぶ高くなってしまった冬馬くんを見上げた。
私の顔を見た冬馬くんが目を見開いて驚いている。
「桜っ!?どうしたの、目が真っ赤じゃないか!そんなにしんどいの?おばさんに言ったの???」
冬馬くんは無理矢理扉を開けて部屋に押し入ると私のオデコに手を当てた。
熱はないね、、、と小さく呟くとまだ小さかった私の視線に合わせるように屈んで頭を撫でてくれた。
「体調が悪い?どうしたの?」
そう何度も聞いてくる冬馬くんに何だか申し訳なくなってしまって、私はブンブン首を横にふった
「違うの。漫画に感動しちゃっただけ。
ごめんね、心配かけちゃった。。」
私はエヘヘと笑うとはにかんで冬馬くんを見上げた。
「冬馬くん、いってらっしゃい。お勉強頑張ってね。」
私が言うと、冬馬くんも優しく微笑んでいつものように頭を撫でてからオデコにキスをしようとした。
咄嗟に身体を一歩も下げて冬馬くんとの間に距離を開けると驚いて目を見開いた冬馬くんと目があった。
「あっっ、ごめんなさい。
冬馬くん、菫ちゃんが待ってるから。。、
いってらっしゃい。」
私は少しだけ笑みを浮かべながら、冬馬くんの背中を押して部屋の外へと押し出した。
「さくら?本当に大丈夫?
今日はなるべく早く帰ってくるから、待ってて。」
冬馬くんは私の頭を軽くポンポンとすると階段を駆け降りた。