甘いあまいイチゴの香り
「恵里菜、実はね、冬馬くんが帰ってくるんだって」
二人ともアンジェに内定をもらって、あとは卒業を待つのみとなった12月。
夕食を食べているときに、ママがおばさんから聞いたと教えてくれた。
年が明けて3月に帰ってくるらしい。
その話を大学のカフェテラスで恵里菜に打ち明けた。
嬉しい気持ちと、もうずっと会っていなかった気恥ずかしさと、、
「冬馬くん、やっと帰ってくるんだ!!!よかったじゃん!!楽しみだね!」
恵里菜は自分のことのように喜んでくれる。
「うん、そうだね。楽しみ。本当に9年会えなかったから……。」
冬馬くんは9年間一度も帰ってこなかった。
エアメールと月に一度国際電話をするだけ。
それでも繋がっていられることが嬉しくて、エアメールが届けば、私からも返事を書いた。
菫ちゃんと、どうなったのかは聞いてない。
ママにもおばさんにも怖くて聞けなかった。
そんな菫ちゃんは大学病院で働きながら、着々と自分のクリニックを開業する準備をしていたから、
いつも忙しそうで、一度も彼氏がいるとか聞いたことがなかった。
もしかしたら、私に書くのと一緒に菫ちゃんにも書いていたのかもしれない。
菫ちゃんは大学で家を出てからずっと独り暮らしをしていたから、届いてても分からない。