甘いあまいイチゴの香り

ダメダメ!!

もう、こんなことしたらダメだよね。



私は気持ちを切り替えるようにそっとベッドから抜け出して、朝食を作るためにキッチンへと向かった。


今朝は和食にしようかな。

鮭と卵焼きと、冷凍保存してあるひじきと、お味噌汁。


朝は冬馬くんもしっかり食べる方だから多めにつくって、
そのまま二人分のお弁当まで作った。



「おはよー。」


テーブルに並べていると冬馬くんが寝癖をつけたまま眠たそうに起きてきて、あくびをしながら洗面所にむかった。


「お、今日は和食かぁ。ほんと、さくらは素敵なお嫁さんになるな。」


洗面所から戻ってきた冬馬くんが椅子に座りながらニコニコとこちらを見ている。


「そーかな。じゃあ冬馬くんがもらってくれる?」


冗談混じりに私が言うと、そっと視線をそらされてしまった。


「っ、冗談!冗談だからっ!さ、たべよ?」

私も席について食べ始める。
何となく顔を合わせにくくて、リモコンでテレビをつけた。



目、反らされちゃった……。


冬馬くん、困った顔してた。


胸の奥がグッと苦しくなって、瞳がジワジワと滲み出したのが分かって、私は平静を装ってキッチンに逃げ込んだ。


分かってるけど、辛いよ。
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