甘いあまいイチゴの香り
「はいはい、菫。桜が苦しくて窒息するだろう。
早く入れよ。」
後ろから肩を掴んで引き寄せられ、私は大好きな匂いの彼に抱き止められた。
「ごめん。桜、あがるね。」
菫ちゃんはピンヒールのピンクのハイヒールを脱いでリビングへと入っていく。
私は肩を抱かれたまま、ソファーへと座らせられ、
その反対側に一馬くんと菫ちゃんが座る。
菫ちゃんがフーッと深呼吸を繰り返すものだから、室内は緊迫した空気になって重たい。
そんな空気を払拭したくて、飲み物をいれようと立ち上がる。
「みんな、珈琲でいいよね?」
三人の返事を聞いてから、私はキッチンへと急ぐ。
その間も、三人は黙ったまま。
菫ちゃんは右手を握りしめて左でで擦っている。
緊張しているのが伝わってきて、
焦らなくていいのに、珈琲を入れる手が震えてしまう。
四人分の珈琲をトレーに乗せてリビングに戻り、テーブルに置くと、冬馬くんにソファーに座るように促された。
張り詰めた空気を破ったのは、一馬くんだった。
「菫、昨日冬馬と抱き合ってたって聞いたけど。」
冷たく感じる声で、責めるように菫ちゃんを見つめる一馬くんに、こっちまで責められているようで喉の奥がぎゅーっと苦しくなる。