甘いあまいイチゴの香り
「あのーーー、その、お二人は???」
なんとなく気まずそうな顔をした春奈ちゃんを見ると、
何だか誤解されているような……
「あぁ、付き合ってるのかって??さぁ、どうかな?」
意地悪な微笑みを浮かべた一馬くんが私の肩を抱き寄せた。
なぁ?と、私の耳元で囁くから思わず一馬くんの声を冬馬くんに囁かれているような感覚になってしまう。
この二人、本当に声はよく似ている。
「違う違う!!!春奈ちゃん違うからね?!」
私が慌てて身体を話ながら言うものの、あまり信じてもらえていない気がする……。
はぁ………
まぁ、いいや。。。
「課長、もう意地悪はいいですから!進歩状況の報告しましょう!」
私は気を取り直して書類を一馬くんに手渡した。
ハイハイと言うと、一馬くんは書類に目を通し、
その瞳はもうすでに先ほど意地悪をした顔ではなくキリリとした課長の顔になっている。
私は気が付かれないように、フーッと溜め息を着くと
課長から指摘された部分に赤ペンを走らせる。
「じゃあ、今日はここまで。また何かあったらすぐに言って。」
一馬くんは書類を手荷物と立ち上がってパーティションまで歩いていくとフッと何かを思い出したのか振り返った。
「桜、今日先に帰ってて。これ。」
チャリンと手元に投げ入られたのは一馬くんのマンションの鍵。
キャーーーと春奈ちゃんが隣でジタバタしているのはこの際気にしないでおこう。
もう、こんなところで渡さないでよ…
そう思っていると、チョイチョイと指で一馬くんがこちらへ来いと呼んでいることに気がついて、思わず駆け寄ってしまう。
条件反射って怖い。