君の本気に触れた時…
耳元で囁く彼の声が、私の体温を益々上昇させていく。


「こんなところで、そんな顔されたらまたキスしたくなるんですけど…」

「……っ!」


昔から知っているはずのハル君なのに、こんな事を言って私を惑わす彼は知らない男の人みたいで心臓がギュンッと痛くなる。

やっと会社のある駅に着きドアが開いた。

通勤ラッシュの時間帯の中、どこで誰に見られているかも分からないしエスカレータに乗るところで彼はようやく私の手を放してくれた。

ホッとしたと同時に、ほんの少しだけ離してほしくなかった…と感じた気持ちには気づかないふりをした。

改札を抜け中城君と一緒に歩き出そうとした私の視界に先輩が見えた。


「…朝倉」
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