君の本気に触れた時…
「先輩…。」

「おはよう朝倉…歩きながら少しだけ話せるかな?」


先輩が気にしているのは、明らかに視線が向けられている中城君。

別に彼とは付き合っているわけでも一緒に通勤しているわけでもないんだから、もちろん彼に気を使う必要はないんだけど…。

先輩の話は土曜の事だと思ったから、私も正直なところ気にはなっていた。

私は一度、中城君の方に視線を向けてこう言った。


「中城君…また後でね。」

「…了解です。」


中城君は先輩に軽く頭を下げると先に歩いて行った。

中城君にはどう思われているのかはわからないけど、あの件があったからこそ私は自分の先輩に対する気持ちがただの憧れだけで…恋ではなかったのだとハッキリさせることが出来たから良かったと思っている。

私は彼の背中を一瞬だけ見送った後、先輩の方に笑顔で向き直った。


「先輩も、ほら行きましょう。」
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