君の本気に触れた時…
「台無しも何も…最初からそんな雰囲気なんて微塵もなかったし、中城君が勝手に……」


まだ反論したい私の口を、彼の大きな手によって塞がれてしまった。

いきなり口を塞がれたせいで口呼吸が出来なくなった私は、思わず鼻から大きく息を吸い込んだ。

もちろん吸い込んだ息はその分、外にもう一度排出されるわけで……

両方の鼻から勢いよく吹き出された息が、まだ私の口を塞いだままの彼の手に小さな風を起こしたらしい。


「ククッ…せんせい、鼻息荒過ぎですよ。さっきから僕の手に鼻息がかかってます。」


それは急に口をふさがれて、鼻呼吸しかできなくなったから!

“ 鼻息が荒い女 ” だと笑われたみたいで悔しぃし…何気に恥ずかしい。

そんな彼を上目に睨みつけ、この手を離せ!!と訴えると彼は失礼にもまだ笑いながら手を離してくれた。


「…もうっ!本当にやめてよ、こんな事。誰か来たらどうするつもり!?」

「別に僕は困りませんよ。」

「私は困る!!それと、普段から鼻息荒いわけじゃないからっ。」


言いたい事だけ言わせてもらうと、中断していた仕事を再開させようと床に落ちてしまったファイルを拾いあげた。

彼は右から左へ聞き流すかのように


「別に普段から鼻息荒いなんて、僕一言も言ってないですよ。」


どこまでも生意気なこの男は、そう言って可笑しそうに笑っている。
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