君の本気に触れた時…
「ほらっ。いつまでも中断してたら終わんないから。真面目に仕事する気がないなら上に報告する事になっちゃうけど…いいの?」


彼の教育係として、毅然とした態度を取らなければと思い直し、少し厳しい言葉を口にした。


「…ハイハイ。真面目にしますよ。理央せんせいに怒られるのは全然いいんですけど、オジさんに怒られるのは勘弁なんで。」


全く懲りてない言葉を言いながら、彼も仕事だけは再開してくれる気になったのか、彼にも渡したファイルをペラペラとめくり目を通し始めた。


「ここでする作業はデータ上の数字と実在庫の数が合ってるかを確認するんだけなんだけど。大体、月末に月一でする作業になるから。内容は照らし合わせていくだけだから全然簡単なんだけど…大変なのはその後の、データ上と実在個数を合わせる事なんだよね。それに関しては、また追い追い教えていくとして、とりあえず今はここでの作業だけやっちゃおう。」


斜め後ろで真剣に話を聞いていた筈の彼を振り返ると、思った以上に近くにいた彼にビクンッと肩が跳ね上がった。

その直後ピクリと動いた彼の手に、思わず一歩下がって構えてしまった。

彼はそんな私の手から再び落ちてしまったフィイルを拾い上げてくれると、ハイと言って手渡してくれた。


「…………クククっ。さすが理央先生、だけど僕に空手の技なんか本気でかけないでくださいよ。」

「…分かってるよ。そんな事するわけないでしょ。これは…さっきの事もあったから思わず防御反応で出ちゃっただけだし。」


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