甘い秘密と苦いウソ
第1章
はじまり
高校入学から早1年と2ヶ月。
入学式に新入生を歓迎していた、淡いピンクの桜たちはあっというまに舞い散って梅雨を喚起させるような赤や紫のアジサイが今は校内にひっそりと咲いている。
アジサイに気を留める人は少なく、みなただ風景のひとつとしてしかとらえていないため認識はしているもののほかのことに目が行ってしまうのだろう。
わたしはただひとり、アジサイの前に座り露にぬれたその花びらをフレームの端に入れながら雨上がりの青く澄んだ空の写真を撮る。
誰かに見られているなんてことは考えずに、撮りたいと思ったら人目も気にせず写真を撮ってしまう。
写真は、わたしの一部だから。
そして写真を誰かに見てもらえるなら手段はいとわない。