愛と幸
「幸哉せんぱーーいっ!」

そう声をかけられた。

振り返ると星崎夢愛だった。

「先輩、何かあったんですか?」

「星崎さん、別れよう。」

俺は星崎夢愛の質問にも答えず、そう言った。

星崎夢愛はすごく傷ついた顔をした。

傷ついてるのはこっちなのに、なんでそんな顔するんだよ。

今にも泣きそうな顔をするこいつを見ていたら、「別れようって言ったのは嘘だよ」って言いたくなった。

でもそれを必死にこらえた。

「な、なんで、ですか…?」

「じゃあね。」

これ以上ここにいたら、泣きそうになると思って、俺は帰った。

それからの俺は、別人になった。

制服は着崩し、ピアスを開け、髪を染めて。

頑なに断っていた告白も受け入れ、来る者拒まず、去る者追わず。

とにかく、星崎夢愛のことが好きだったあの頃の俺を消したかった。

無かったことにしたかった。

あんなに辛い思いはもうしたくなかった。

星崎夢愛は、ある1人の男と付き合い始めたらしい。

同じ学年の峯岸悠真とかいうやつ。

俺と別れたらもう次かよ。

そんなに俺はどうでもよかったんだな。

俺はあんなに好きだったのに。

もう、恋愛なんてしない。

そう決めた。
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