愛と幸
「あ、の。それなら、いいです。私、先輩のこと諦めます。まさか先輩に好きな人がいるなんて思わなくて…。」

声が震えないように気を付けた。

すると、先輩が立ち止まった。

私も立ち止まって振り返ると、先輩がじりじりと詰め寄ってきて、壁ドン、とかいう体制になってしまった。

「せ…んぱい…?」

先輩の顔が近づいてくる。

拒まなきゃ。

先輩は私の事好きじゃないんだから。

そう思ったのに、唇に柔らかい感触。

…拒めなかった。

私は、こんなにも大好きな幸哉先輩を拒めないよ。

唇が離れる。

「…どうして。」

私が声を発するとまたキスをされた。

さっきよりも激しいキス。

大人のキス。

息が苦しくなって、先輩の胸をたたくけど、離してくれなくて。

一体どれくらいの間キスされていたのだろうか。

ずいぶん長く感じた。

ファーストキス…だったなぁ…。

「はぁ…はぁ…」

息を整えていると、

「誘ってんの?」

と聞かれた。

「さ、誘ってなんかいません!」

「誘ってるようにしか見えないけど。」

「か、勘違いです…!」

「ふうん。」

先輩は、そのまま歩き出した。
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