夢物語【完】
「で、あんちゃんはちーくんに告白すんの?今日」
ワインを仰ぐように飲むなっちゃんの飲みっぷりに感心してたら、「もう済んでるんですよ」と陽夏ちゃんが答えた。
「え?で、ちーくんは?」
「千秋は杏に興味ゼロ」
隣の高成がなっちゃんに根も葉も無い返答をするから「そんなんわからへんやん!」と叱った、ら。
「杏が千秋の嫁ってヤだよ、俺」
「俺も杏の姑がお前って嫌」
「京ちゃん!!」
「ギャハハハ!子供関係ないじゃん!!無理じゃん!!」
なっちゃんが大口開けて爆笑するのを見て悟さんが笑う。
確かに今の話だけを聞けば子供云々より親の問題の方が難ありなのは明らか。
あたしとしては千秋の事を考えると杏ちゃんには悪いけど、今の状況は千秋のストレートな気持ちが見えるし悪くないと思う。
千秋が今までに恋をしてきてるんかわからんけど、状況に流されるような事はしてほしくない。
ただ、もう少し優しく言うてもええんちゃうかなぁ…と思う事は多々あるけど、これは悲しいかな遺伝だから仕方ない。
将来、千秋と杏ちゃんが結婚することになってもあたしは全然構わんし、京平と親戚になったって全然いい。
二人がほんまに好きで一緒になるならそれでいいとは思う。
「てゆーか、ツカさんのサクにうちの凪どうです?櫻、可愛いし」
また突拍子のないことを言うなっちゃんに中塚さんは笑いながらも「凪ならいいよ」とビールを飲みながら言う。
「うっそ!うちの凪は音楽バカだよ?どっかの旦那と同じで楽器ばっか触ってるよ?」
「そのバカは今バカ売れ中のバンドのプロデュース手掛けてんじゃん。悪くないだろ」
そう言う中塚さんは本気なのか嘘なのかわからないけど、笑いながら答えた。
どっかのバカとは当然京平の事だけど、そんな答えにまだ爆笑するなっちゃんのせいか高成が携帯を渡してくれて、何かと思うとまた電話。
「もしもーし」
『あ、母さん?今日って凪くんち行かなきゃダメだよね』
うちの長男、千秋からの電話。
予想済みの内容に「当たり前やろ。もう時間やで」と返すと溜息が返ってきた。
『なんで今年は別々なん』
「試しにやってみるのもいいやん。子供だけって楽しいかもよ?」
『絶対一緒の方が楽しいよ』
「まぁ今年は子供だけでやって楽しくなければ来年は元に戻してもいいやん」
『どうせ杏でしょ?いらんことすぐする』
「いらんこと…かどうかは置いといて、とりあえずそっちを楽しんでみたら?」
口調で電話の相手が千秋とわかったんか全員がトーンを抑えてあたしの話を聞いてる。
高成はニヤニヤしながらあたしを見てるし。
普段冷静な千秋が関西弁を話すときは少し感情が乱れてるときで、イラついたり怒ったり、基本的にマイナス感情のときに出るけど、今日は凪くんがいるからめんどくさいんやろう。