夢物語【完】
どんなに忙しくても、どんなに楽しくても、絶対忘れなかった。
思い出すこと。
思い出すって言い方は少しおかしいかもしれんけど、会われへんから最後に見たあの笑顔を思い出すしかなくて。
今どんな髪型してんのか、どんな気持ちなんか、どんな表情(かお)をしてんのか、知りたいけど、見れんくて。
会いたいけど、会えんくて。
会いに行けばええんやろうけど、会社もそう簡単に休めんくて、それに高成との時間やスケジュールもなかなか合わんくて。
気持ちが通じ合う前からわかってたことやけど、傍に、近くにおれんことが、どんなけ寂しいことなんか、ちゃんと考えて決めたことやのに、現実はそう甘くない。
メールを交わすたびに、電話で声を聞くたびに、変わらへん想いを伝え合うたびに、寂しさは大きくなって、傍にいきたくて、抱きしめてほしくて、流すつもりのなかった涙が溢れてくる。
それでも、想いは消えんくて、強くなる一方で、自分でもびっくりするくらいハマってく。
会えんことがあたし達をさらに強く結んでる。
そんな気がする。
高成もそうやったらいい。
あたしと同じように、あたしの声を聞くたびに、あたしを強く想ってくれたら嬉しい。