夢物語【完】
お風呂から上がって布団に倒れ込むと、ふと思い出した。
今日、携帯チェックしてない。
時間は23時半。
まさかな~なんて思いながら携帯の画面を見ると、着信1件。
相手は“高成”。
着信時の時間は22時。もう一度時計を確認して、一度携帯を閉じる。
明日の到着予定時間は11時。
朝が早いときは早寝の高成やから、もう寝てるかもしれん。それに寝てんのを起こすのもな~って思う。
でも、声が聞きたいのが本音。
明日会えるし別にいいやんって気持ちもあるけど、毎日のことになると無いことが変な感じになるっていうか、ちょっと寂しいっていうか。じゃあ、自分からしろよって感じやけど。
今閉じた携帯をまた開いて、意を決してボタンを押した。
『…涼?』
「うん」
3コールめで出た携帯越しの声。あたしからかけたのに「うん」ってなんやねんって心の中でつっこんだ。
「電話くれたのに気付かんくて、ごめん。寝てたね?」
『んや、寝てないよ』
声のトーンでは明らかに寝てましたって感じ。
やっぱり、かけ直すべきじゃなかったよな、と後悔。
「やっぱり切るわ。ゆっくり休んで」
『なんで?』
なんで?が今、すごく返事が早かったんやけど。
「え、だって、声が寝てたっぽいんやもん。起こしたかなって思って」
『寝てないよ。って、さっき言ったじゃん』
なんか、口調がキツイ。
ケンカになる、かな?ケンカとか、したことないんやけど。
高成の言い方が怒ってるように感じる。
「おこっ」
『怒ってないよ』
バレてる。どんなけ察しがいいんや、高成は。
『なんか、関西の人って言い方がキツイんだよね。いや、そう聞こえるんだよね』
高成の声のトーンは変わらんねんけど、なんか違う。なんかが違う。
あたしは関西の人間やから、今の話の流れで変なところはひとつもないんやけど。でも、このまま放置するのは違うから、「どこが?言ってくれたら直すよ」って言ったのに、受話器の向こうの高成は黙ったまま。
「高成?言ってくれんとわからんよ?」
『やっぱり、いい。今のなかったことにして』
そういうけど、それはあかんでしょ。
今日の高成、変。かなり、変。
「どうしたん?」
『なにが?』
「なんか変やで。なんかあった?」
向こう側の高成は少し苦笑した感じで、「涼にはバレバレだね」って呟いた。
『なんだか、寝れなくてさ。久しぶりに涼に会えると思うと緊張しちゃって。その他にも理由はあるんだけどね』
緊張とか、それならあたしだってしてるってば!!と、素直に言えない自分が憎らしい。
高成も緊張することってあるんや。それもあたし相手に。
それはそれで嬉しいけど、なんか恥ずかしい。
あたしも高成が好きやけど、そう言ってくれると高成もあたしのことが好きなんやなって感じる。
って、恥ずかしいな、もう。
『涼?なんで黙ったの?』
いや、理由は言えない。
「あ、いや、嬉しいな、って思って」
『どこが?どうして?』
高成って性格的にかなり追究してくるタイプで気になると理解するまで問いつめられる。
こうなったんは、あたし自身が原因やったりするんやけど。
「どこがって、その、緊張するって言うてくれたとこ?」
そんなこと?!って驚いてるけど、あたしってそんなもん。
結構、安上がりな女なんです。
そうやって言ってくれるだけで、幸せになるし、笑顔にもなれるし、もっと好きになれる。
好きのメーターなんて、とうに越えちゃってる。会ったらどうなるかなんて想像しただけで頭パンクしそうなくらい。
『そっか。ちょっと安心した』
「なんで?」
『だって、涼って言葉少ないから見えないと分かりづらいんだよね。だからここ半年はずっと俺ばっか好きなのかって不安だったんだ。て、明日直接話せるのにいっぱい話しちゃったな』
そっか。。高成も不安やったんや。あたしだけじゃなかった。余裕ぶっこいてるように見えただけなんや。
でも、あたしの気持ちの伝え方は直さんとあかんってことね。
『お互い通じ合ってからずっと会ってないし、気持ちがなくなることってないんだけど、そのぶん不安が募るっていうか、気になっちゃうんだよね』
「それは、あたしも同じやから。高成だけじゃないよ。高成が遠くにおるから、どこで誰と何をしてても見えんから嫉妬なんて出来んし、しようもないけど、寂しさならあの日からず~っと感じてる。だから、来てくれるって言うてくれたときはほんまに嬉しかった」
安心したら、いつも以上に素直に言葉が出てきて言い終わった後で急に恥ずかしくなった。あたしらしくない、やん?たまに(無意識やけど)素直になると後悔するんよね。
『明日、楽しみだ』
あたしの言葉に対しての返事はなし。高成にしては珍しい。
いらんこと言ったかな~って不安やけど、本当に嬉しそうな声で“楽しみ”と言う声を聞いたら、どうでもよくなった。
あたしも楽しみだ、とは言ってやらないけど。
『目覚めてきちゃった。でも、もう遅いから寝よっか』
「そうやね。じゃあ、また、明日?」
『なんで疑問系なの。明日じゃん。ちゃんと俺のこと待っててよ』
疑問系にもなるよ。未だに半信半疑なんやから。
「うん、待ってる」
『じゃあ、おやすみ』
「おやすみ、高成」
電話を切って、またベッドに沈む。
緊張した。
半年間こんな毎日を繰り返してる。毎日連絡したってなかなか緊張が解けん。
いいかげん慣れろって感じやけど、なかなか慣れんのが、このあたし。
別に慣れる必要もないとあたしは思うんやけど、こんな長い間ドキドキするのもどうかとも最近は思い始めてる。ま、それもしょうがない。
緊張してた心が高成の声を聞いただけで安心して、今は落ち着いてる。
高成の声ってなんでか落ち着く。ず~っと聞いてたくて、心地良い。
目を閉じると、そのまま夢に落ちていった。
今日、携帯チェックしてない。
時間は23時半。
まさかな~なんて思いながら携帯の画面を見ると、着信1件。
相手は“高成”。
着信時の時間は22時。もう一度時計を確認して、一度携帯を閉じる。
明日の到着予定時間は11時。
朝が早いときは早寝の高成やから、もう寝てるかもしれん。それに寝てんのを起こすのもな~って思う。
でも、声が聞きたいのが本音。
明日会えるし別にいいやんって気持ちもあるけど、毎日のことになると無いことが変な感じになるっていうか、ちょっと寂しいっていうか。じゃあ、自分からしろよって感じやけど。
今閉じた携帯をまた開いて、意を決してボタンを押した。
『…涼?』
「うん」
3コールめで出た携帯越しの声。あたしからかけたのに「うん」ってなんやねんって心の中でつっこんだ。
「電話くれたのに気付かんくて、ごめん。寝てたね?」
『んや、寝てないよ』
声のトーンでは明らかに寝てましたって感じ。
やっぱり、かけ直すべきじゃなかったよな、と後悔。
「やっぱり切るわ。ゆっくり休んで」
『なんで?』
なんで?が今、すごく返事が早かったんやけど。
「え、だって、声が寝てたっぽいんやもん。起こしたかなって思って」
『寝てないよ。って、さっき言ったじゃん』
なんか、口調がキツイ。
ケンカになる、かな?ケンカとか、したことないんやけど。
高成の言い方が怒ってるように感じる。
「おこっ」
『怒ってないよ』
バレてる。どんなけ察しがいいんや、高成は。
『なんか、関西の人って言い方がキツイんだよね。いや、そう聞こえるんだよね』
高成の声のトーンは変わらんねんけど、なんか違う。なんかが違う。
あたしは関西の人間やから、今の話の流れで変なところはひとつもないんやけど。でも、このまま放置するのは違うから、「どこが?言ってくれたら直すよ」って言ったのに、受話器の向こうの高成は黙ったまま。
「高成?言ってくれんとわからんよ?」
『やっぱり、いい。今のなかったことにして』
そういうけど、それはあかんでしょ。
今日の高成、変。かなり、変。
「どうしたん?」
『なにが?』
「なんか変やで。なんかあった?」
向こう側の高成は少し苦笑した感じで、「涼にはバレバレだね」って呟いた。
『なんだか、寝れなくてさ。久しぶりに涼に会えると思うと緊張しちゃって。その他にも理由はあるんだけどね』
緊張とか、それならあたしだってしてるってば!!と、素直に言えない自分が憎らしい。
高成も緊張することってあるんや。それもあたし相手に。
それはそれで嬉しいけど、なんか恥ずかしい。
あたしも高成が好きやけど、そう言ってくれると高成もあたしのことが好きなんやなって感じる。
って、恥ずかしいな、もう。
『涼?なんで黙ったの?』
いや、理由は言えない。
「あ、いや、嬉しいな、って思って」
『どこが?どうして?』
高成って性格的にかなり追究してくるタイプで気になると理解するまで問いつめられる。
こうなったんは、あたし自身が原因やったりするんやけど。
「どこがって、その、緊張するって言うてくれたとこ?」
そんなこと?!って驚いてるけど、あたしってそんなもん。
結構、安上がりな女なんです。
そうやって言ってくれるだけで、幸せになるし、笑顔にもなれるし、もっと好きになれる。
好きのメーターなんて、とうに越えちゃってる。会ったらどうなるかなんて想像しただけで頭パンクしそうなくらい。
『そっか。ちょっと安心した』
「なんで?」
『だって、涼って言葉少ないから見えないと分かりづらいんだよね。だからここ半年はずっと俺ばっか好きなのかって不安だったんだ。て、明日直接話せるのにいっぱい話しちゃったな』
そっか。。高成も不安やったんや。あたしだけじゃなかった。余裕ぶっこいてるように見えただけなんや。
でも、あたしの気持ちの伝え方は直さんとあかんってことね。
『お互い通じ合ってからずっと会ってないし、気持ちがなくなることってないんだけど、そのぶん不安が募るっていうか、気になっちゃうんだよね』
「それは、あたしも同じやから。高成だけじゃないよ。高成が遠くにおるから、どこで誰と何をしてても見えんから嫉妬なんて出来んし、しようもないけど、寂しさならあの日からず~っと感じてる。だから、来てくれるって言うてくれたときはほんまに嬉しかった」
安心したら、いつも以上に素直に言葉が出てきて言い終わった後で急に恥ずかしくなった。あたしらしくない、やん?たまに(無意識やけど)素直になると後悔するんよね。
『明日、楽しみだ』
あたしの言葉に対しての返事はなし。高成にしては珍しい。
いらんこと言ったかな~って不安やけど、本当に嬉しそうな声で“楽しみ”と言う声を聞いたら、どうでもよくなった。
あたしも楽しみだ、とは言ってやらないけど。
『目覚めてきちゃった。でも、もう遅いから寝よっか』
「そうやね。じゃあ、また、明日?」
『なんで疑問系なの。明日じゃん。ちゃんと俺のこと待っててよ』
疑問系にもなるよ。未だに半信半疑なんやから。
「うん、待ってる」
『じゃあ、おやすみ』
「おやすみ、高成」
電話を切って、またベッドに沈む。
緊張した。
半年間こんな毎日を繰り返してる。毎日連絡したってなかなか緊張が解けん。
いいかげん慣れろって感じやけど、なかなか慣れんのが、このあたし。
別に慣れる必要もないとあたしは思うんやけど、こんな長い間ドキドキするのもどうかとも最近は思い始めてる。ま、それもしょうがない。
緊張してた心が高成の声を聞いただけで安心して、今は落ち着いてる。
高成の声ってなんでか落ち着く。ず~っと聞いてたくて、心地良い。
目を閉じると、そのまま夢に落ちていった。