夢物語【完】
別に構わないけど、それで別れたとかやめてくれ。
それと来るときは絶対高成に連絡すること。
今日は俺が面白半分で連絡したけど、今日みたいになっちゃ俺が困る。
まぁ面白かったけどな。
「あと、働いて金あんなら月一でもいいから会いに行け」
レストランを出て家までの車の中で店に来るときの注意事項を述べたあと、聞き逃してしまうくらいサラっと言い放った。
運転中やから前を向いてるのは当たり前やねんけど、ずっと店長の横顔を見てた。
店長からそんな言葉が出るなんて思ってなかった。
面白半分に聞いてるだけやと思ってたから本気で驚いた。
「なんだよ、んな顔すんな」
眉にシワ寄せて居心地悪そうにタバコを吸う。
もしかせんくても、店長なりに心配してくれて応援してくれてんのかもしれん。
そう思えたら顔が緩んだ。
やっぱり店長は優しい。
「お前らは特殊だから一般的な遠恋ってヤツとはまた違う。でも本質的には何ら変わらない」
そう言ってまた一口吸う。
「毎週会えないなら月一でもいい。会えないから会うんだ。会えるのに会わないのとは違う。自分の女が自分のために会いに来てくれるのは単純に嬉しい」
そして、また一口吸う。
「高成なら飛んで喜ぶだろ」
そう言って笑った。
「店長には毎日会いに来てくれる彼女がおるんやね」
言葉の感じでそう思ったから口にしてみた。
あながち外れてなかったみたいやったけど鼻で笑われた。
「毎日飯作りにくる女ならいるっつっただろ」
「彼女でしょう?」
「なんでそうなるんだよ」
絶対彼女のはずやのに隠そうとする店長がわからんくて問い詰める。
彼女って言わん理由が知りたい。
彼女じゃないなら毎日家に上げたりせんやろうし。
店長が思う恋人に対する想いが知りたい。
「だって、目が優しい」
愛おしそうに考えてるのに。
さっきからタバコの本数が増えてることに気付いてないあたり無意識なんやろう。
あたしの予想では彼女に会いたくなってると思う。
あたしのミジンコくらいの女の勘がそう言うてる。
「俺みたいな男にさせるなよ」
「答えになってない」
「…だから」
もう何本目かわからんタバコを灰皿に押し付け、新たに取り出そうとしたけど入ってなくて苛立つように舌打ちをしたあと、少し溜めて吐き出すように教えてくれた。
「人を斜めから見るような男にさせるなってこと」
人を斜めから見るって何?
そう聞こうと思ったけど家に着いたからやめた。
店長は性格が捻くれてるんやと思う。
だから多分、想像でしかないけど真っ直ぐな彼女がおって、その彼女の気持ちを斜めから常に見てるってこと・・・多分。
実はチキン?と口から出そうになった。
まぁ、要は素直じゃないってこと。
毎日ご飯を作りに来てくれる彼女に感謝してるけど口には出さん、みたいな。
「店長、彼女のこと大好きなんですね」
捻くれてる店長にあたしの素直な気持ちを言うてみたら、「冗談キツイわ」と言われた。
「お前に言われるとは俺も落ちたな」
「店長優しいけど屈折してるから」
うるせぇよ、と言ってサイドブレーキを下げた。
だから帰るんやと思って車から離れた。
ライトが点いて最後にまた目が合う。
「俺のよく知る女にそっくりで参るわ」
じゃあな、と軽く手を上げて窓が閉まるのと同時に車は走り出した。
車が見えんくなるまで見てた。
結局、彼女って言わんかったけど、どうやらあたしは彼女と似てるらしい。
彼女かどうか知らんけど。
それと来るときは絶対高成に連絡すること。
今日は俺が面白半分で連絡したけど、今日みたいになっちゃ俺が困る。
まぁ面白かったけどな。
「あと、働いて金あんなら月一でもいいから会いに行け」
レストランを出て家までの車の中で店に来るときの注意事項を述べたあと、聞き逃してしまうくらいサラっと言い放った。
運転中やから前を向いてるのは当たり前やねんけど、ずっと店長の横顔を見てた。
店長からそんな言葉が出るなんて思ってなかった。
面白半分に聞いてるだけやと思ってたから本気で驚いた。
「なんだよ、んな顔すんな」
眉にシワ寄せて居心地悪そうにタバコを吸う。
もしかせんくても、店長なりに心配してくれて応援してくれてんのかもしれん。
そう思えたら顔が緩んだ。
やっぱり店長は優しい。
「お前らは特殊だから一般的な遠恋ってヤツとはまた違う。でも本質的には何ら変わらない」
そう言ってまた一口吸う。
「毎週会えないなら月一でもいい。会えないから会うんだ。会えるのに会わないのとは違う。自分の女が自分のために会いに来てくれるのは単純に嬉しい」
そして、また一口吸う。
「高成なら飛んで喜ぶだろ」
そう言って笑った。
「店長には毎日会いに来てくれる彼女がおるんやね」
言葉の感じでそう思ったから口にしてみた。
あながち外れてなかったみたいやったけど鼻で笑われた。
「毎日飯作りにくる女ならいるっつっただろ」
「彼女でしょう?」
「なんでそうなるんだよ」
絶対彼女のはずやのに隠そうとする店長がわからんくて問い詰める。
彼女って言わん理由が知りたい。
彼女じゃないなら毎日家に上げたりせんやろうし。
店長が思う恋人に対する想いが知りたい。
「だって、目が優しい」
愛おしそうに考えてるのに。
さっきからタバコの本数が増えてることに気付いてないあたり無意識なんやろう。
あたしの予想では彼女に会いたくなってると思う。
あたしのミジンコくらいの女の勘がそう言うてる。
「俺みたいな男にさせるなよ」
「答えになってない」
「…だから」
もう何本目かわからんタバコを灰皿に押し付け、新たに取り出そうとしたけど入ってなくて苛立つように舌打ちをしたあと、少し溜めて吐き出すように教えてくれた。
「人を斜めから見るような男にさせるなってこと」
人を斜めから見るって何?
そう聞こうと思ったけど家に着いたからやめた。
店長は性格が捻くれてるんやと思う。
だから多分、想像でしかないけど真っ直ぐな彼女がおって、その彼女の気持ちを斜めから常に見てるってこと・・・多分。
実はチキン?と口から出そうになった。
まぁ、要は素直じゃないってこと。
毎日ご飯を作りに来てくれる彼女に感謝してるけど口には出さん、みたいな。
「店長、彼女のこと大好きなんですね」
捻くれてる店長にあたしの素直な気持ちを言うてみたら、「冗談キツイわ」と言われた。
「お前に言われるとは俺も落ちたな」
「店長優しいけど屈折してるから」
うるせぇよ、と言ってサイドブレーキを下げた。
だから帰るんやと思って車から離れた。
ライトが点いて最後にまた目が合う。
「俺のよく知る女にそっくりで参るわ」
じゃあな、と軽く手を上げて窓が閉まるのと同時に車は走り出した。
車が見えんくなるまで見てた。
結局、彼女って言わんかったけど、どうやらあたしは彼女と似てるらしい。
彼女かどうか知らんけど。