夢物語【完】
「もうちょっと皆と話したかったのに、急に帰るって言うし、チョコ口に入れたままキスするし、高成のために作ったブラウニーをあたしの口の中に入れるし!」
そのうえ首傾げて可愛いし、笑いかけられるとドキドキするし、頭撫でられたらそんなん全部忘れるし。
「今日は高成に振り回されてばっかりやん...」
高成の肩に頭を乗せて、胸に顔を埋める。
ギュッと服を掴むと、ちゅ、と頭にキスが落とされる。
ちゅ、ちゅ、と頭の先から、こめかみ、額まで何度もキスをされる。
「あ、あの、高成?」
キスをされるのは気持ちいい。
頭のてっぺんから痺れるような感覚になる。
でも、さすがに恥ずかしい。
真っ赤になってる自分が恥ずかしい。
顔を見せんように俯いたままでおると、顎を掴まれてクイッと上を向かされる。
「顔、真っ赤」
ふっ、と笑うと、スッと近付いて、再びキスの嵐。
額、まぶた、目尻、鼻の先、頬、口元に何度も何度もキスをする。
「ちょ、ちょっと待って!」
さすがにやりすぎやと思って、止めると視界いっぱいに高成の真剣な顔があった。
「高成?」
気が付けば、高成とは向かい合って座ってて、いつもどおり、あたしは高成を見上げてた。
「あの…?」
無表情なまま固まるから不思議に思って声を掛けてみても無反応。
顔の前で手を振ってみたら、その手を掴まれた...と思ったら、抱きしめられた。
「好きすぎてヤバイ」
ぎゅうっと抱きしめられた腕からはいつも以上の強さ。
息が苦しくなるくらい締め付けられる。
そのまま腕は緩められることなくポツリポツリと話し出した。
皆と話したがってるのわかってた。
練習風景も見たいんだろうなってわかってた。
最初はそのつもりだったし、そうしてやりたかったけど。
そう言うと、あたしの体制がキツイことに気付いたのか、少しだけ腕の力を緩めた。
そして、深く息を吐いた。
「涼介と並んで話したり、笑い合う涼を見てたら、ダメだった」
何を言うてんのかわからんくて、「はぁ?」って言いそうになった。
いや、言いそうになって、慌てて飲み込んだ。
だって、それって、俗に言う、アレやろ?
「涼と話す涼介がムカついて」
「もしかして・・・ヤキモチ?」
嬉しさのあまり、ニヤけるあたしに「うるさいっ」と言うと、さっきはしてくれんかった口唇にキスされる。
「ふ、……た、んん!?」
息を吸って、止めてもらおうと名前を呼ぼうとしたら、さらに深くなるキス。
息するタイミングすら与えてくれんくて、本気で苦しくなってきた時にフワッと体が浮いて、やっと離れた時はあたしはソファーに仰向けになってて満足げな高成が覆いかぶさってた。
「ちょっ」
「無理」
そのまま、再びキスの嵐。
今度は口唇に留まらず首筋にもキス。
「高成っ」
「無理」
「ちょ、っと待って!」
「やだ」
やだって、今日は可愛い子ぶったら許されると思ってる。
いつも言わんくせに。
「涼」
「…なに?」
進む行為に身体の力が抜けてきた頃、高成が優しく名前を呼ぶから怒れんくなった。
恥ずかしくて目を逸らしたままでおったけど、続きの言葉が出てこんくて、仕方なく高成を見ると高成の手が頬に触れた。
うん?と首を傾げると、フワッと笑って、徐々に近付いてくる顔。
あと10センチのところで、少し左にズレて、耳元で囁かれる。