あなたに呪いを差し上げましょう(短編)
「ルークさま。わたくしにいくさはわかりませんけれど、口を挟むのをお許しください」


どうか。どうか。


「あなたさまに、勇ましく死ににゆけと願うのを、お許しください」


耐えかねて声がかすれる。

頬も鼻も唇も飛び越えて、ぼろ、と、生ぬるい雫がふた粒、床に転がった。まつげが重さを増している。


頬を幾筋も流れた涙が、引き結んだ唇を過ぎ、顎を滑り落ちて木目に染みを作っていく。

表情が見えないように深く頭を下げる。


傲慢かもしれない。思い上がりかもしれない。

ただ、ルークさまがこの国を大事にしているから、わたくしも大事にしたいから、言うのだ。


「行ってください。そしてきっとこの家に帰って来てください。お待ちしております。どうぞご無事で。……お待ちしております」


ね。ほら。


「ひどい、呪いでしょう?」

「……ああ。ひどい——ひどく、やさしい約束だ」
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