あなたに呪いを差し上げましょう(短編)
「……わたくしには教養もございませんのに」

「あなたは充分学んでおられる。勤勉でもある。それに、仮にあなたほどの方が無教養とそしられても、申し訳ないけれど、そもそも英雄の妻に一般の女性以上の教養など求められない。私がこの体たらくだからね」


あなたの苦手なことも、しがらみも、私が精一杯取り除こう。困ったときは一緒に考えよう。

ただ、二人で穏やかに暮らしたいと、思うよ。


「少し、考える時間をいただけませんでしょうか。気持ちに整理がついていなくて……」

「もちろんだ。いくらでも待つよ」


これだけ乞われて蔑ろにできるほど、わたくしは非道でも愚かでもなかった。


何より、ルークさまはとても素敵な方で、穏やかな暮らしをわたくしも夢見ていた。


「頼むから、いつか、どんな形でも構わないから、返事だけは残してほしい。いなくならないでくれ」

「……はい。お約束いたします」


ありがとう、だなんて笑ったルークさまの目が、いつか冷めてしまうのではないか。

わたくしのせいでご迷惑をかけるのではないかと不安もある。


でも、怖さ以上に、嬉しさが優った。


父に連絡して許しをもらえたら、お話をお受けしようと思った。
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