クールな同期と熱愛はじめ

足取り軽く、彼がドアへと向かう。

いったいなにをご馳走させられるのか。ちょっとした不安を抱いて彼の背中を追いかけた。

守衛室に寄り、帰ることを告げて歩きだす。少し冷たい風が頬を撫でていく中、ずんずん進む桜木くんの斜めうしろを歩きながら、大切なことを思い出してしまった。私にはプラン設計の他にも任務があることを。

男の人が“こんな女性にキュンとする”と特集に組まれていたネットニュースを思い返す。

よし、まずはこれでいこう。

桜木くんとの距離を詰め、そっと手を伸ばす。彼の袖口をちょこんと摘んだ。女性にされたいことのベストテンに入っていたものだ。

桜木くんがハッとして肩越しに振り返る。
『彼のキュンをいただきました』と思った次の瞬間、桜木くんの目が鋭く細められた。

――な、なに。

予想とは違う反応に戸惑う。


「なにすんだよ、セーターが伸びるだろ」

「……え?」


嘘! キュンとしないの!?
いかにも迷惑といった顔で私の手を振り解いた。

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