クールな同期と熱愛はじめ
……もうやだ。胸キュンさせるつもりが、させられてどうするのか。
「おい、行くぞ」
彼のひと言に気づいてみれば、横断歩道の前でひとり取り残されていた。点滅を始める歩行者用の信号。桜木くんは道路の真ん中で振り返り、「早くしろ」と急かした。
歩行者のほとんどは、すでに渡り終えている。慌てて駆けだし、彼に追いついた。
「ほんっとドンくせー」
そう言いながら、桜木くんは私の手首をむんずと掴んだ。
反射的に引っ込めようとすると、「轢かれたいのか」と言われてしまった。
掴まれたのは手首。手の平じゃない。手を繋ぐというのとは、また違う。
とはいえ、私の心臓は再び騒ぎだす。一度ならず二度までも。
信号が点滅する中、彼に手を引かれて道路を駆けた。