クールな同期と熱愛はじめ
「おっと、そうきたか。誰もいないオフィスでふたりっきり! いいねぇ、そそるねぇ。オフィスラブって――」
そこで間宮さんは口を開けたまま固まってしまった。
なにかと思いつつ桜木くんを見ると、刺すような視線を間宮さんに浴びせていたのだ。これでは黙るのも無理はない。
「な、なんだよ、そんなに怖い顔するなよ。ごめんってば」
間宮さんが低姿勢に転ずる。“大阪の商人”のように手を揉んで眉尻を下げた。
「性質の悪い風邪でダウンしてたから、遅れを取り戻すためだ」
「その風邪、そんなにひどかったのか」
桜木くんの目が私へと向けられる。
それに気づいた間宮さんは、ピンときたのか「もしかして悠里ちゃんからもらったとか?」と大正解を導きだした。ところが次に彼の口から出たのは、「移っちゃうようなことをしたんだ」というねじ曲がった憶測だった。
「してない」
「してませんよ!」
桜木くんと声がはもる。