クールな同期と熱愛はじめ
彼女がそう言うと、空席の隣の男性が「それじゃ、早速いきますよー。まずは俺から自己紹介いっちゃいますかー!」と、やたら高いテンションで立ち上がった。
「間宮仁志(まみや ひとし)、二十七歳! 飲食店経営! 彼女はいません!」
直立不動からお辞儀をし、再び上げた顔を犬のパグのようにくしゃっとさせた。
思わず唖然としてしまったものの、人の好さそうな印象だ。飲食店経営とは、なかなかやるじゃないか。
その隣のふたりは爽やかイケメンで、揃って二十七歳の会社員ということだった。
まだ来ていない空席の人と四人、大学の同級生らしい。
女性陣も続いて挨拶を始める。
私の知らない女性は、ふたりとも美香と同じ会社らしかった。
頼んだビールで乾杯し、飲食店経営者の隣に座る、吉井と名乗った男性を“未来の彼氏候補”としてロックオンしようと心密かに決めたときだった。
「おう! 司! こっちこっち!」
パグ似の間宮さんが立ち上がって手招きをする。
残るひとりが登場したようだ。
悠然と近づく足音。それが私の前にある空席で止まった。