クールな同期と熱愛はじめ
「俺ね、こう見えて中学生時代には都大会で二位まで昇りつめたんだ」
「えーそうなんですか。それはすごいですね」
素直に感動する私の隣で、桜木くんは「二位だけどな」とボソッと呟く。
しかし二位でも十分すごい。私は運動がてんでダメだった。
中学生のときに入っていた吹奏楽部では、腹筋を鍛えるためだと学校の階段を一階から三階まで何往復も走らされて、途中で気を失ったことがある。ちなみに五十メートル走るのに九秒もかかる、のろまっぷりだ。
「ちょっとやってみる?」
「でも私、下手くそですよ?」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと手加減するからさ」
そこまで言われて『遠慮します』とも言えず、流されるままにラケットを手渡された。
温泉旅館でやったことがあるのに、ラケットの持ち方すらうろ覚えだ。
「握手するみたいに持ってみて」
間宮さんが私のうしろに回り込み指導する。
「これがシェークハンド」と言われて、そういえばそんなネーミングを聞いたことがあるかもしれないなと思った。