クールな同期と熱愛はじめ

◇◇◇

「桜木くんって結構熱くなるタイプだったんだね」


オアシスをあとにした私たちは、駅に向かって歩いていた。


「私のことを負けず嫌いだって言ったけど、桜木くんだってかなりのものだよ」

「うるせー」


からかい口調で言うと、桜木くんはおもしろくなさそうに不満顔だった。

私がリゾットを食べ終えても決着はつかず、結局はドロー。勝敗がつくまでひと晩中でもやる勢いだった間宮さんは、肩を弾ませて呼吸しながら、『今日のところは勘弁してやる』なんて言っていた。
帰り間際には、『今度は胡桃ちゃんを連れてきてね』というお願いも忘れずに。

そして、私におごらせようとしていたはずの桜木くんは、逆に私にご馳走してくれた。
あれだけ“風邪ひきの罪”を私に着せようとしていたのに。彼によれば、つい勢いで払ってしまったそうなのだけど。

肝心のリゾットは、確かにおいしいものだった。完全に冷めたものを食べた桜木くんでさえ、「うまい」を連呼するほどに。
経営手腕はさておき、間宮さんの舌は信頼に値するみたいだ。

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