クールな同期と熱愛はじめ

電車を乗り継ぎマンションへ到着すると、エントランスで管理人のおじさんと、もうひとり三十代くらいの男の人が立っていた。
「こんばんは」と挨拶しながらふたりの横を通りすぎようとすると、「宇佐美さん、宇佐美さん」と声がかかる。


「はい?」


足を止めて答えると、管理人さんは「あ、桜木さんもご一緒でしたか」と続けざまに言った。

桜木くんがうなずきながら私を見る。私たちは顔を見合わせ、揃って首を傾げた。


「ずっと待っていたんですよ」

「……俺たちをですか?」

「ええ。実は水漏れがありましてね」

「水漏れ?」


私たちの声が重なる。もう一度顔を見合せた。


「四階でやっていた工事の影響で、水道管に損傷がありまして」


管理人さんが説明する隣で、三十代とおぼしき男性が「申し訳ありません」と頭を深く下げる。

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