クールな同期と熱愛はじめ

作業服を着ているところを見ると、工事業者なのかもしれない。

このところ、四階と五階で大掛かりな改装工事が行なわれているのは知っていた。エントランスに張り紙がされていたし、郵便受けにも『騒音等ご迷惑をお掛けします』と断りの文書が入っていたこともある。


「ちょうど宇佐美さんと桜木さんの部屋に水が滴ってしまいまして……」

「部屋が水浸しなんですか?」

「おふたりともお留守だったので、確認のために入らせていただいてしまったのですが、快適に過ごせる状況ではありません。水浸しというほどではないのですが、キッチンとダイニングはちょっと……」


なにそれ……。
管理人さんの説明に放心してしまった。


「とにかく、部屋に行ってみます」

「――あ、私も!」


桜木くんの背中を追いかける格好でエレベーターに乗る。二階で先に私が降り、桜木くんはそのまま三階へ向かった。

カギを開けて中へ入り、電気を点ける。その瞬間、絶句してしまった。そこから見えるキッチンの床一面に水たまりができているのだ。

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