クールな同期と熱愛はじめ
吉井さんのジョッキが空になったので、すかさず尋ねる。
桜木くんのことは、いないものと思おう。
せっかくロックオンした吉井さんと近くの席になれたのだ。無視だ、無視無視。
「うーん、そうだな。それじゃ青りんごサワーでももらおうかな」
「青りんごサワーですね」
今、自分が出来る最上級の笑顔を浮かべる。
胡桃のことを思い出し、彼女を真似て頭を三十度ほど横へ傾けた。
男は“かわいい”ものに弱い。クールビューティーよりもキュートなのだ。
ところが私の隣からは「きもっ」と、桜木くんのボソッとした声が聞こえた。
――“きもっ”!?
眉がピクリと動いたものの、なんとか笑顔を保持する。
無視だから。桜木くんはいないのだから。
自分に言い聞かせると、吉井さんは笑顔で「うん、ありがとう」と言ってくれた。
よしよし、出だしは好調だ。
すぐ近くを通った店員に青りんごサワーを私の分と合わせてふたつ注文する。
気持ちを共有するなら、同じ飲み物に限る。
以前、ネットサーフィンをしているときに見つけた、“狙った相手を落とす極意”に書いてあった。