クールな同期と熱愛はじめ
Round7:消えた姿
週が明けた月曜日。
出勤した設計部には、始業時間が過ぎたというのに桜木くんの姿が見えなかった。
周りの人に聞いても、「さぁ?」という答えか「どうしたんだろうね」という答えしか返ってこない。
土曜日、日曜日と、謝罪のために彼の部屋を訪ねてみても留守だった。
竹中部長には、土曜日の朝早いうちに、高梨さんとの間にあったことを報告していた。
もしかしたら、高梨さんから断りの連絡が入るかもしれないと。
しかも、大事な設計案を部屋に置き去りにしたままだ。
高梨さんからもホテルからも連絡がこないところをみると、高梨さんが処分したか、自分の懐に収めたかのどちらかだ。
ただ、桜木くんがその場に居合わせたことは、なんとなく言わずにおいた。
部長も、高梨さんの行き過ぎた行為には不快感をあらわにして、私のことも「大変な目に遭ったな」と慰めてくれた。
桜木くんには、あとで電話でもしてみよう。
そう思いながらパソコンが立ち上がるのを待っていると、竹中部長から「宇佐美、ちょっといいか?」と控えめな声が掛けられた。
部長のあとを追って応接室へと入る。
部長はやけに神妙な顔つきをしていた。
その顔を見て、なにを話されるのかおおよその見当はついた。
「高梨さんだが……」
ゴクリと喉が鳴る。
やっぱり予想どおりだ。