クールな同期と熱愛はじめ

本当のことを言えば、ここ数年、運動らしいことをしたためしはない。
スカッシュなんて運動量の多そうなスポーツは、きっとワンセットも持たないだろう。それどころか、ラケットにボールを当てることすら無理かもしれない。

でも、嘘も方便。男の人は“すごい”という言葉が好きだと、これまた“極意”で読んだ記憶がある。


「かっこいいってほどのこともないよ」


吉井さんが照れ笑いで頭を掻く。


「ううん、テニスじゃなくスカッシュってところが素敵なんです」

「……そう?」

「はい!」


これでもかという笑みでうなずいた。


「今度私もやってみたいなー」


何気なく誘ってほしいオーラをだしてみる。


「やってみるといいよ」

「でも、全然やったことないから」

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