クールな同期と熱愛はじめ

訴えるって、いったいどういうことなんだろう。


「打ち合わせ中に桜木が乗り込んで来て、いきなり殴りかかられたと」

「――そんな! 違います! 殴ってなんかいないです!」

「それはわかっているから落ち着け」


テーブルに体を乗り出した私を部長が宥める。


「土曜日の朝、宇佐美から連絡があった直後だったよ、高梨氏から電話がきたのは。桜木も居合わせたことをどうして黙っていたんだ」

「……申し訳ありません」


頭を下げる以外にない。
部長には、高梨さんに襲われそうになったところをなんとか自力で逃げ出したとしか報告していなかったのだ。


「高梨氏から連絡を受けて、すぐに桜木に確認を取った。殴ってはいないが、壁に押し付けたことは認めたよ」

「それは私を助けようとして」


あそこで桜木くんがそうせずに私をあっさり引き渡していたら、私はきっと……。

< 201 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop