クールな同期と熱愛はじめ
「スポーツクラブならインストラクターとかいるし。言えば教えてもらえるよ」
――いや、そうではなくて。
思わず手の甲で彼の肩先を叩いて、突っ込みを入れたくなる。
「吉井さんが教えてくれると嬉しいなーなんて」
「いや、俺よりインストラクターに教わった方が断然うまくなれるから」
サラッと返されてしまった。
うまくなる云々ではないのですが。吉井さんに教えてもらう行為が肝心だということに、どうして気づいてくれない。
私は会う口実を作ろうとしているのだ。うまくなりたいわけではない。
吉井さんはもしや、天然くんなのでは。これだけわかりやすくアプローチしているのに、それに気づかない様子でいるところを見ると、そうなのかもしれない。
これは相当手強いと見た。ひとまずトイレへいって気持ちを切り替えてこよう。
「ちょっと失礼します」とひと声かけ席を立った。
さて、次はどうやって攻めようか。
直球の“教えてください”が通用しないのでは、いったいどうしたらいいのか。