クールな同期と熱愛はじめ

そもそも、それほど男性経験が豊富な方でない私には、かなりの強敵だ。

化粧ポーチを取りだして軽くメイク直しをする。とりあえず、シュシュでまとめていたストレートの長い髪を解き、印象に変化を与えることにした。

よし、もうちょっと頑張ろう。密かに気合を入れてトイレを出ると、そこで向かいの男子トイレから出てきた桜木くんにぶつかりそうになった。狭い通路ゆえだ。

彼が私を見て一瞬だけ目を見張る。
もしや、髪を下ろした私を見てドキッとしたとか?
……いやいや、彼に限ってそれはない。


「惨憺たる結果だな」


目元に笑みを浮かべながら、面白半分に桜木くんが言った。


「……なにが?」


言いたいことはなんとなくわかる気もするけれど、敢えて強気で聞く。


「吉井、まったくその気ないぞ。宇佐美に興味なし」

「――なっ」

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